【後編】これからのアーティストとクラウドファンディング

2015/09/11
by Takashi Watanabe

 
これから音楽活動を行っていくアーティストの皆さんにとって、当たり前の選択肢となっていくであろう『クラウドファンディング』。実際にアーティストの皆さんがプロジェクトをスタートさせようとする際、必要な準備や計画は何なのか。
 
そんな質問たちをクラウドファンディングサービス『Makuake』を運営する株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングの中山亮太郎社長に聞いてみた本連載。後編です。気になる前編もコチラで公開中。
 
 
始まった当初『チャリティ活動』というイメージが強すぎた

 
ーー運営側として、音楽コンテンツ特有の難しさを感じる点があれば教えて下さい。
 
難しいのは、ファンより外へプロジェクトが拡散していかない点です。プロジェクト自体は幅広い範囲にリーチするけれど、お金の申し込みまでには繋がらないケースが多い。 
 
面白いのは、お金を出す人の熱量です。実現して欲しいという熱量がものすごく高い。すごく表裏一体になってしまうのですが、プロダクトに比べてファン以外への認知はは広まりにくいですが、その分伝わっている範囲(ファン)の熱量は高いところでしょうか。 
 
 
 
ーー日本市場における『音楽 × クラウドファンディング』の課題はどこになりますでしょうか?
 
もっとビッグアーティストが使っても、面白いのではないかと。あとは単純に(プロジェクトの)量が少ないというのもあります。まだ音楽活動における『あたりまえの選択肢』には、なれていない。やはりそこを当たり前化していく作業が必要だなと感じています。 
 
 
ーー『当たり前化』ですか。
 
はい。今の認知範囲はアーティストでいう『イノベーター層』だなと感じます。 
 
 
ーー何がハードルとなっているのでしょうか?
 
正直に申し上げると(クラウドファンディングに)参加するファンたちには、ハードルを感じていません。極端に言えば、eコマースするのと変わらない要領で皆さん楽んでくれている。 
 
ハードルを感じているのは、アーティストの皆さんの意識ですね。その原因になっているのは、クラウドファンディングに関する誤認なのかなと。本来、クラウドファンディングとは『お金を下さい』と頼むことではなく『いっしょにお祭りをつくりましょう』というプロジェクトなんです。 
 
クラウドファンディングが日本に入ってきたとき、『チャリティ』という側面が強すぎたのも一因かと。チャリティ要素の強いプロジェクトばかりで、アーティストたちに自分たちのものではないという印象を持たれてしまった。 
 
 
ーーたしかに当初、そんなイメージがありました。
 
今ようやく、クラウドファンディングが1つのあたらしい取り組みとして認識されるようになった。本来は心を踊らせる楽しいものなのだという認識が浸透してきた。
 
なので、アーティストの方々には早めにクラウドファンディングを活動の武器の1つとして活用して、ファンに魅力的なコンテンツを提供してほしいですね。 その部分の意識改革と、使い方の浸透は目下の課題です。 
 
ーー資金集め以外のモチベーションですよね。
 
はい。極端ですが、テレビCMを打つ代わりにクラウドファンディングでプロモーションを行ってもよいわけですから。もう少し、気軽に(クラウドファンディング)にお付き合い頂ければと。 
 
 
ーーたしかに。そういった発想の転換が出来ますよね。
 
たくさんの方々にお話を聞いて感じたのは、(アーティストの)ファン自体は、そうやってアーティストと深く関われる機会を求めているんですね。だけど、アーティストサイド・レーベルサイドが気にしてしまいがちなのは、同業者の目線なのかなと。
 
 
ーー同業者の目線、ですか。
 
他社レーベルや、他アーティストの目線ですよね。『MVつくるのにクラウドファンディングって、どうなんだろうね?』と言っているのは、そのアーティストのファンではない。恐らく、その様子を知った同業者の意見なんですよね。その意見が、さも一般人かのように、ないしはファンの意見のようになってしまっているなと。 
 
 
ーーああ、すごく分かります。
 
ですよね。気にするのが同業者の目線になってしまって、ファンではなくなってしまっている。本来気にすべき対象が、すり替わっていることがあるな、と感じることがありました。
 
 
『何をやりたいか』が決まっていないことが多いのが、一番の課題

 
ーーアーティストが実際に『クラウドファンディングをやろう!』と思ったときに、まずどんなアクションを起こすべきでしょうか?
 
まずは、マネージャー任せ・プロデューサー任せではなく、自分自身が深くコミットして進めていくプロジェクトであるという心づもりをするのが1つかなと。 
 
次に『プロジェクトで、何を達成したいかを明確にする』ですね。この2つめが議論されていない場合が非常に多くて…『とりあえず資金をあつめたい』って。 
 
 
ーーいらっしゃるんですか?
 
いらっしゃいますね。しかも、結構多いです。『何かをしたい』というモチベーションよりも、『活動資金をあつめたい』というところに終始しがちというか… 弊社側が『◯◯◯をやりましょうか?』『こんな企画いかがですか?』と提案することもあって。 
 
 
ーーえっ!逆提案を?
 
はい。これは本来の目的から大きくズレてしまっているんですよね。 
 
『今回こういうコンセプトの楽曲があって、こんなMVをつくりたいんです』という相談であれば、我々も『では、こういう風に見せていきましょう』『こんなふうにファンを巻き込むのはいかがですか?』というアドバイスができる。 
 
この『何をやりたいか』が決まっていないケースが圧倒的に多いので、まずはここを決定させることが必要です。 
 
ーーそうですよね...
 
 
ユーザーの心を躍らせるチャンレンジを

 
ーー『Makuake』だからこそ、アーティストに対して提供できる魅力や価値を教えて頂けますでしょうか?
 
 
まず、アーティストの方々にかなり向き合います。どんな戦略やビジョンを持っていて、どのような活動を行っているのか。そうした部分をスタッフが理解したうえで『今回、こんなことをやってみましょう』と提案するコンサルティングや、サポートがかなり手厚いです。 
 
なぜそれが出来るかというと、Amebaブログのエンターテイメント部門と密接に情報共有しています。彼らは状況に応じては、ブログを書いている本人と実際に会ったり、飲みに行ったりして、ブロガーのブランディングや考えを理解している。そのノウハウの共有が大きいです。 
 
もちろん、クラウドファンディングを行うことにリスクもあるかもしれない。それは我々も当然理解していて、そのうえでアーティストさんの戦略やブランディングに沿った提案が出来ていると思います。 
 
 
ーー最後の質問になりますが、これからクラウドファンディングを検討するアーティストの皆さんに向けて一言お願い出来ますでしょうか?
 
そうですね。『コレ思いついちゃった!』『コレは絶対楽しい!』と感じる新しくて面白いアイディアを、ドンドン気軽に出してもらって、ぜひ我々と共にいっしょに実現しましょう。 
 
今まさに、音楽業界はあたらしいかたちを本当に模索している最中だと思います。だからこそ、そのトップランナーとしてファンといっしょに、Co-Creation(共創)を楽しんでいく文化を生み出せれば。ぜひ一緒に、ユーザーの心を躍らせるチャンレンジをしていきましょう。 
 
 
ーー大変学びの多い時間でした。ありがとうございました。
 

 
中山社長をはじめ、サイバーエージェント・クラウドファンディングの皆様、取材にご協力いただきありがとうございました!本連載でクラウド・ファンディングに興味を持った方はMakuakeにぜひお問い合わせ下さい♪

 

Makuake
株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディングサービス。会員が3000万人を超えるAmeba事業との連携含め、サイバーエージェントグループのメディア力・告知力を生かした取り組みが特徴。

 

 

 

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