『ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)』音楽が日常にある方が、人は幸せになれる。(後編)
2015/08/04
『ROTH BART BARON』 左から三船雅也(Vo.)、中原鉄也(Dr.)
TUNECORE JAPAN学生アンバサダーです!前回に引き続き、『ROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)』さんのインタビュー、後編公開です!後編はお二人が海外や地方でのライブの経験を通して感じた、音楽や音楽を巡る環境に対する考え方を中心に、伺っています。
―――私は『ロット・バルト・バロンの氷河期』のCDリリース・ツアー・ファイナル(昨年6/7の渋谷O-nest公演)と、LPのリリース・ツアー・ファイナル(昨年12/18の渋谷WWW公演)に伺っていたのですが、LPのツアー・ファイナルはアメリカ・ツアー(ROTH BART BARON'S The Ice Age TOUR2014 "North America")の影響もあったのか、出音が格段に違っている印象を受けました。
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「ROTH BART BARON LIVE AT "WWW" ONE MAN SHOW 2014」
やはり日本とは違う環境でライブやレコーディングをすることで、ROTH BART BARONの音楽やお二人ご自身が影響を受けたり、得たものがあったりしたのでしょうか?
三船 :そうですね……印象深かったとすれば、アメリカでは音楽を身近に感じていることですかね。
中原 :まず、“ライブ・ハウス”っていう概念がアメリカと日本では全然違っているんです。日本でのライブ・ハウスはライブを観に行く場所って感覚だけど、アメリカではまずバーがあって、そこから先はお金を払ってライブを見る。バーで飲んでて、楽しくなったら中に入る、みたいな自由な環境があるんです。また、日本のライブ・ハウスみたいに機材使用料みたいなものはなくて、機材は自分たちで当然のように持ち込むんです。そういう環境が当たり前なので、音楽に対する意識がぜんぜん違うし、ツアーで回る都市数も圧倒的に多いからバンドの体力もつく環境だと感じました。
三船 :一番面白いなって思ったのは、海外のロック好きって金曜日の夜にライブを見に行くことが、日常の1週間の時間割に入っているんです。彼(中原さん)が言ったようにバーがあって、ふらっとフリーで入ってドリンクを飲む。奥ではライブをやっていて入口がある。そこから漏れてくる音が面白そうだなって感じたら入口でお金を払って、中に入って、楽しむ。それがすごく健全だと感じました。音楽を楽しむことが日常の中にあるんです。
日本だったら何ヶ月先に好きなミュージジャンのライブがあるから、そのチケットを取って、何か月前に休みを取りました。18時、19時くらいに始まるから、仕事早引きしないと見れない。けど、海外だとライブが始まるのは21時とかで、仕事終わって、ご飯食べて、シャワー浴びて集合でも間に合うから、無理がない。別にチケットをその場で買わなくても何とかなるし。人気なショーは無理だけど。
そういう感覚、音楽と日常の関わりみたいなところは、日本はワン・ステップ頑張って、非日常的なことをしないといけない。だけど良くも悪くもアメリカは日常的なところを感じました。フランス人の友人がフランスもそうだって言ってましたね。イギリスはパブだし。
中原 :街を歩いているだけでも音楽が聴こえてくるんです、いろんなところから。そうすると気になる音楽が聴こえてきたら「入ってみよう。」って気持ちになるから新しい音楽との出会いが圧倒的に多いだろうし。あと、日本はチケットが圧倒的に高すぎて、なかなか新しい音楽に出会う機会が少ないんじゃないかなって思いますね。
―――そうですね、よほど好きな人じゃないとチケットって買いませんよね。高くて。
三船 :だからみんなフェスティバルに行って、40分くらいずつ、たくさんのバンドを見たほうがお得だし、って考えになる。だから単独公演には行かない、みたいなところが今のバンドの人たちの頭を悩ませるとこだと思うんです。そこで何かはわからないけど、単独のほうが面白いかもって思える瞬間を、もうちょっとお客さんに提供できたらいいのかなって思いますね。それはチケット価格なのか、バンド側でできる努力もたくさんあるだろうし。僕らはまだまだこれからだけど、なにか出来たら楽しいなというか。
音楽的には……。日本だと音楽の授業で鍵盤ハーモニカとリコーダーを習うじゃないですか。なんでだよ、って思いません?
―――別に、他の楽器でもいいですよね。
三船 :ピアノやギター、この世界にはものすごい種類の楽器があるのに、何でリコーダーなの?って。せっかく義務教育が音楽の入口になるんなら、もっと音楽に触れる体験を増やせたらいいのに、って思うんです。どうしても僕らは普通の義務教育を受けていると、「クラシックは堅そうだぞ」「弦楽器は触ると壊れるんじゃないか」とか、「ピアノは難しそう」「管楽器は大変そう」とか、音楽にハードルが出来て楽しめない先入観を持ってしまうと思うんです。僕はそういう楽器に小っちゃいころから触った感覚や、弾いた体験を日常的に得ないと音楽ってなかなか作れないなと思っていて。そういう楽器に触る感覚は海外のお客さんには自然にあるんですよ、学校のブラスバンドとかに入っていたりしていて。今後、音楽をやる人がそういうことをどんどんやっていったら、もっと人生カラフルになるんじゃないかなって思います。
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「Campfire」
―――私はよくライブに行くのですが、周りの人はライブに熱心に通うほど音楽に興味ない、っていう人が多数で。先ほどのお話にもあったように、音楽に対するハードルが高く見えてるのかな、と思うんです。そういう何か見えないハードルを下げるようなことしたいな、と個人的に思っています。
三船 :これからApple Musicとかが始まって(取材時はサービス開始前)、Spotifyは日本に入ってくるかどうなるかわからないけど、いわば携帯電話がひとつあればいろんな音楽に好きに調べられるわけじゃないですか。図書館のライブラリよりもたくさんあるし、そこにアクセスすることはとても簡単で。音楽を聴くきっかけはたくさんあるんです。
その後、実際にライブで聴くと、「音が体にあたってうるさいんだ。」「低音が強いとジーンズの裾がびりびりって震えるんだ。」ってそういう感覚だとか、スマートフォンで聴いた時、付属のイヤフォンで聴いていたけど、イヤフォンを変えたら音質がこんなに違うんだとか、レコードに針を落とした瞬間って全然違う聴こえ方をするんだとか、TuneCoreや配信サービスが例えば「ライブに行ってみよう。」、「レコードを触ってみよう。」とか音楽を体験するきっかけになったらすごく面白いなぁと思いますよね。
―――Spotifyのお話が出ましたが、『ロット・バルト・バロンの氷河期』『化け物山と合唱団』をSpotify配信されていますよね。まだSpotifyは日本でサービスを開始していませんが、お二人はSpotifyにどんな印象をお持ちですか?
三船 :今、音楽で「あれ聴いた!?」とか共通の話題が出ることって日本はほとんどないけれど、Spotifyになるとバーンってプッシュしてくれる音楽や最新の音楽をすぐに聴くことができる。「あれ聴いた!?」「すごいよね!」っていう話題になる音楽が良質の音楽なんです。そういうところが面白いな、と思います。
中原 :先日、オブ・モントリオール(Of Montreal、アメリカのバンド。6/7の金沢公演にて共演)と共演したときに、会話の中で「僕らもSpotify配信しているんだよ。」と言ったらその場で聴いてくれて、(アカウントを)フォローするよという会話になったんです。
Facebookのように、音楽を通じてソーシャル・ネットワークで繋がれるのがすごくいいな、と思っています。その場でパッと聴けて、「どんな音楽が好きなの?」「この音楽だよ。」ってページを開いて見せたりできるし、実際に彼らの音楽を聴かせてくれたり、とかカジュアルにできるのがいいなって。
三船 :そうだよね。
世界中のSpotify再生トップチャートが見られて、その国のランキングで流行っているアメリカやイギリスの音楽の中に突然、インドネシア語のダンスポップが入ってきたり、スウェーデンの現地の音楽が入ってきたりして、「今こんなの流行ってるんだ!」って知ることが出来て、音楽との出会いの場になるんだよね。
中原 :ライブが終わった後とか、その興奮のまま帰りの電車で聴きたいというのがあるじゃないですか。Spotifyが日本でも普及したら、そういうことがもっと簡単に出来るようになって、音楽を聴く人が増えるのかな、って思ってます。
三船 :いろんな音楽聴く瞬間が増えるよね、日常の中でね。
古い著作権切れの映画とか、新しいアルバムでも誰かがYouTubeに上げたりすると、すぐそれが聴けるじゃないですか。音楽もそのうちフリーで聴けるものになっていって、人があまりお金を出さないようになってくる。今もそうだけど。僕らがいくらレコーディングに何百万かけました、と言っても、皆が聴くのはアップルの白いイヤホンだったり、ノートパソコンのしょぼいスピーカーで聴くってことはわかっているし、家でいい音環境で音楽を聴くだけじゃないことはわかっている。でも、みんな外に出てライブに行くようになるんじゃないかな、って考えていて。
音楽が日常にある方が、人は幸せになれるなぁと思っています。その時に初めて、音楽家、ミュージシャンとしての価値が出てくるというか。皆が「ライブを体験したい!」「楽しい!」と思えるようになって。日常に求められるなぁと思った時、僕達バンドがそういう人たちに何を与えられる……と言ったら上から目線だけど、一緒に楽しい時間を共有できるのか、そこにお金を払ってもらえるのかってことをこの先何十年ミュージシャンは考えなきゃいけないし、レコードやデジタル、そういうもの以外の手に持って嬉しいものかもしれないし。そういった体験を買ってもらえる上で、ビジネスというか、僕らが音楽をやり続けられて、聴く人も音楽を聴き続けられるようにできたらいいんじゃないかなと考えますけどね。Spotifyとかそういう物を見ていると。
一つ一つの街が対等に、プライドを持ったバンド・ミュージックが盛り上がれば絶対に楽しくなるはずなんですけどね。
―――話が変わりますが、ROTH BART BARONは地方へよくライブに行かれますよね。地方のお客さんの反応っていかがですか?
三船) :東京であまりやらなくてすみません(笑)。そうですね……初めて見た人がほとんどだから、喜んでくれる人が多いですね。
中原 :この間も、富山と金沢でライブ(6/6、7開催のフェス。noid presents『Magical Colors Night』)をやって。金沢での公演は2度目だったんですけど、前回観に来てくれたお客さんがまた来てくれたこともあってとても盛り上がりました。富山の人は初めてだから、「お、おう……。」って感じで衝撃を受けてましたね。
三船 :TuneCoreじゃないけどどこに居ても配信はできるし、上京しなくても、自分の生まれ故郷にいたほうが幸せだなって感じている人達が多かったりする。東京、大阪だけが特別ってわけでもなく、日本各都市、いろんな特色があって、みんないろんな哲学の中で動いているんです。その中でそれぞれのレコード・ストアがあって、バンド・ミュージック、バンド・シーンがあって、ライブが行われていて。「今、あの街がすごいらしいぞ!」とか、そういう各土地のシーンの盛り上がりが対等になれば面白いなって僕らは思っていて。
今回、金沢はnoid(ノイド、北陸を中心に活動する5人組)ってバンドが主催したイベント・フェスティバルだったんですけど、そのような現象が各都市に起きて、イベントが行われていれば健全だな、そういうコミュニティができればいいなと思って、各都市を回っています。一つ一つの街が対等に、プライドを持ったバンド・ミュージックが盛り上がれば絶対に楽しくなるはずなんですけどね。
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noid「ヨルヲアルク」
―――いいお話をいただきました。先ほどのSpotifyのお話然り、各地の盛り上がりが音楽を取り巻く環境全体に反映されていけばいいですね。
三船 :そうですね。どこに住んでいても、それぞれ楽しいところがあるわけで。たまたま東京は物と人があふれているかもしれないけど、それが同時多発的に起こればいいと思っています。別に山形がクラブ・ミュージックで盛り上がっていていいし、「札幌が面白いらしいぞ!」と聞いて東京から行くとか、各地方のいいバンドが東京に集まって、イベント・フェスティバルができたら、すごく楽しいじゃないですか。各都市でいろんな景色が見られて、健康的かな、と思います。
中原 :地方に行く度に、その街を盛り上げたいんだっていう人によく出会うんです。僕らはライブしてお客さんに見てもらうだけでなく、そういう(地方を盛り上げたい)人たちに出会って、そこで仲良くなったり、何か協力できたらと思っています。
三船 :そうだね。音楽的にそういうところがあって、彼等の姿勢に共感するところがあって、リスペクトできれば、「一緒にやりたい」って思う。別にお金の問題じゃなくて、手伝えることがあれば手伝いたいし。「余計なお世話だよ」と言われるかもしれないけど、そういう人たちに出会えるってことは、色々恵まれてるんですよね。だからツアーはたくさんやるべきだなって思うし、実際、やっていて素晴らしい経験になっています。
―――では、ROTH BART BARONが2008年に結成されてから約7年、ここまで音楽活動を続けてこられた理由って、なんだと思いますか。
中原 :自分は、彼(三船さん)と一緒にやってて励まされるというか。もちろん落ち込む時もありますけど。ライブでお客さんがすごい盛り上がってくれたとか、いいねって言ってくれたりとか、次のステップが見えたりとか。目標がなくなったことは今までないから、途絶えなかった、頑張ってこれたのかな、って思います。
三船 :あれですよね、「付き合って長いですけど、長続きの秘訣は?」みたいな、「どうやって夫婦を長く続けてるんですか。」みたいなものだよね(笑)。
……運がよかったんです。すごく。いい出会いがたくさんあって、毎日常に新しい目標ができて、「音楽をやってて良かったな。」って思える瞬間や、音楽をやれる現状があって。
僕らと一緒に始めた同時期のバンド達や、かたやライブハウス出たての頃に活動していたバンド達は、今はみんなもう別々の道にあって。僕たちには他の選択肢が存在しえなかったのかもしれない。周りのミュージシャンは、なんでこんな厄介なことをずっとやっているんだろう、なおかつCD売れない、とか嘆いてばっかりいるし。そういうことを聞いているとあんまり楽しくないなぁって思うし、僕はあまり絶望的に思えなかったのが幸か不幸か、よかったんだと思います。
そして、真剣に音楽を考えられるようになったからなのかな。最初の2年は音源も作らないでいたけど、バンドが本格的になってきた2011年から5年間活動してきて、過去の7年よりこの先の何十年が気になってきたというか。自分の音楽で周りにできること、どうなったらこの先面白いかを考える方が楽しいからですかね。
―――最後に、今後新たにやってみたいことってありますか? 先日のCLUB SNOOZER(5/8の代官山ユニット公演)では新曲を演奏していたようですが、新しいリリースがあったりするのでしょうか?
三船 :そうですね。今それに向けて準備中で、たぶん今年中には面白いことが言えるように頑張っているんですけど、順調に遅れています(笑)。
中原 :今年中には、リリースできるようにね。
三船 :うん。いろいろ考えているんですけど、一日がすぐ過ぎちゃうので、頑張らなきゃなぁって気合を入れています。もうちょっと楽しみにしていてください。……もっとなんか面白いこと起こるよね?
中原 :そうだね。
―――新譜の他にもさらに面白いことがあるんですね! 楽しみにしています!!
中原 :はい!
三船 :お楽しみに!
【Live Infomation】
2015 . 8 . 11 / 東京 / FEVER(with UQiYO)
2015 . 8 . 14 / 北海道 / RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO
2015 . 8 . 16 / 千葉幕張 / SUMMER SONIC 2015
2015 . 8 . 21 / 大阪 / Pangea (with Two Million Thanks)
2015 . 8 . 22 / 兵庫 / ONE Music Camp 2015
2015 . 8 . 23 / 福岡 / 薬院UTERO(ONE MAN SHOW)
2015 . 9 . 21,22 / 東京 / 下北沢インディーファンクラブ
2015 . 9 . 24 / 大阪 / 難波Mele (with HINTO, CARD)
2015 . 9 . 25 / 東京 / 晴れたら空に豆まいて(with tigerMos)
ROTH BART BARON
2008年結成、東京出身の2人組ロックバンド。2014年1月には初となるNYツアーを成功させ、4月には1st Album「ロットバルトバロンの氷河期」をリリース。
Written by TUNECORE JAPAN 学生アンバサダー コイズミ
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